車検は、安全に自動車の運転を行うためには必要な制度です。
しかし、この車検は、自動車のオーナー側の立場からすれば大きな負担になります。
町の中を走っていると、「格安車検◯万円!」という看板をよく見ます。
そして、いつも給油しているガソリンスタンドでも車検受付を行っているところもあります。
「やっぱり、安さを求めて大変なことになったら、いやだからディーラーで車検しよう!」
こういった判断をする方もいらっしゃるでしょう。
では、これらは本当なのか?紹介したいと思います。
Contents
車検とは?
車検とは・・・
大まかに説明しますと、道路運送車両法という日本の道路上を走行する車両が確保していなければいけない最低限の安全基準を定めた法律により、一定期間に1回車の状態の検査を受け、安全基準に合格していることの証明を受けなければいけない事を言います。
普段車を使用していて、ボンネットを開けてエンジンを点検したり、車の下側に潜り込んでサビや部品にガタツキが無いかなんて見ることは無いですよね?
一定期間に1回車の重要部分(走る・曲がる・止まるに関連する場所)や環境に関する箇所などを点検して異常が無いかを確認する事です。
人間に例えると、1年1回の健康診断や人間ドッグと思って頂ければ分かり易いですよね?
ただここで問題なのが、安全基準に合格しているからといって、次の車検まで故障しないことを保証している訳ではありません。
あくまで車検の検査の時に、安全基準を満たしていた事を証明しているだけに過ぎないのです。
それと、安全基準に合格していない場所は点検・整備・交換などをしなければ検査で合格となることはできません。
ディーラー車検の特徴
ディーラー車検は、それぞれのメーカーのディーラーの整備工場で車検をします。
まず、メーカーのバックアップを受けた整備を受ける事ができるということです。
特に、技術的にメーカーの直接的な支援があることをディーラーの営業の方やフロントの方は強調されるケースが多いです。
後は、ディーラーで車検を受けると保証期間が延長されたりなんていう特典が有ったりします。
ディーラー車検のメリット
- 自社メーカー車両に関する知識・技術が高い。
- 専用の工具・故障診断機を持っている。
- メーカー推奨の純正部品を使用している。
- 保証延長等のメーカーの特典を受けることができる。
メリットの1つ目には、自社メーカーの車両に関する知識・技術が高いという点があります。
もちろん自分達が販売しているメーカーの車に限ってとなりますが。
ですから、自社メーカーの車両の整備ではメーカーとしての責任を持って行っており、その点では安心感は高いとなります。(まあ、自社車両なので当然といえば当然ですが・・・)
2つ目のメリットとしては、整備を行うための専用の工具や故障診断機を持っていることと、自社メーカーの車両の整備に関するノウハウはメーカーのバックアップを受ける為、他の整備工場と比べて点検・整備に関する安心感は高いです。
ただ、これも1つ目のメリットと同様で、自社メーカーの車両なのでメーカーの責任がありますので当然と言えば当然なのです。
3つ目のメリットは、メーカーが推奨する純正部品を使用する事で部品の信頼感があるということです。
部品も人の作った「モノ」ですので、全てが完璧ではありません。しかし、メーカーのマークの入った純正部品を使用する事でどのメーカーの部品かがお客様に分かり易くなって安心感があるということです。
また、純正部品では全てではありませんが、部品の保証期間が設定されているものも中にはありますので、そこもお客様にとって安心できるポイントと言えます。
4つ目のメリットは、ディーラーで車検を受けると車の保証延長を受けることが出来るやメンテナンスパックを特別価格で加入する事が出来るといった特典が有ったりします。ただし、これはディーラー毎で異なりますので、必ずこのような特典があるという訳ではありません。
ディーラー車検のデメリット
- 料金が高い
- 自社メーカー以外の車は不得意
- 新品部品以外での交換を進めてくれない
- 修理よりも交換を優先される
デメリットの1つ目は、いつも言われることですが、料金が高い!
ディーラーは、もちろん特定の自動車メーカーの車を専門に扱う会社ですから、整備の基準・品質や使用する部品、そして整備・点検などの料金に関してもメーカーの基準(方針)があります。
メーカーとして自社ディーラーの整備や部品の品質を要求しますので、整備内容や使用する部品であったり、整備・点検の金額が安く設定されることは基本的には無いわけです。
2つ目のデメリットとして、自社メーカー以外の車は不得意であるということです。
まぁ、当然といえば当然なのですが、自社メーカーの車両はノウハウもデータも持っています。さすがに他社の車の全てのノウハウとデータまで持っているディーラーというのは、聞いたことはありません。
昔は、他社メーカーの車の整備を断っていたなんて時代があったと聞いたこともありますが(私が物心付く前の話らしいですが・・・)今は、ディーラーも仕事を断れるほど余裕がある状況ではありません。
他社メーカーの車も受付けています。ただ、やはり得意ではありませんので整備に時間が掛かったり、部品が無かったりします。
仕方が無いといえば仕方が無いのですが、お客様側から見てみるとこれはデメリットと言えます。
デメリットの3つ目ですが、新品部品以外での交換を勧めてくれないということですが、ディーラーは基本的には新品部品での交換を勧められます。(しかも純正の新品です)
これも、ディーラーからしてみると仕方が無いといえば仕方が無いのです。
簡潔に言いますと、ディーラーもメーカーから「純正部品を売りなさい!!」と言われているからです。
メーカーは自動車の製造・販売だけでは無く、部品の製造・販売も重要なお仕事のひとつですので、ディーラーはその方針に従って純正の新品部品での交換を勧めてくるのです。
4つ目のデメリットは、修理よりも交換を優先するということです。
これには、純正部品を販売するようにしていることと、もうひとつが修理を出来る整備士が少ないということがあります。
例えば、排気ガスを出すための部品でマフラーという部品が有ります。エンジンから出て車の下側を通って車の後ろまでつながっているパイプのような部品です。
車の下側を通っていますので、特に降雪地域では凍結防止剤などの影響で錆びてしまい、穴が開いてしまうことがあります。
マフラーに穴が開いて排気ガスが漏れてしまっていると、車検には合格できません。また、穴が開いてしまった場所によっては暴走族のような爆音が出てしまう事もあります。
このマフラーは穴の開き方やサビの具合によっては修理することが可能なのですが、ディーラーの整備士さんは若い方が多いので、技術が必要な溶接修理が出来ないことが多く、まだまだ修理すれば使えるマフラーを修理では無く部品の交換としているケースがあります。もちろん、全て修理が出来るわけではありません。交換が必要な場合もあります。
またどの車のどの場所の部品なのかによってとてつもなく高額な部品となることもあります。ハイブリット車の一番エンジンに近い場所のマフラーは新品部品で20万円以上するなんて車もあるんです。
格安車検の特徴
車検とは車検を受けた時点で安全基準に合格していれば、車検は合格となります。
格安車検は、車検の総額が安くなることに主眼を置いていますので、車検に合格する範囲でしか整備は行わないのです。
ちょっと極端な言い方をしますが、車検の検査の時に安全基準に合格さえしていれば良いので、車検の翌日に車が故障しても、検査の時に合格していたから問題ないということになります。(そこまで極端な言い方をする会社はたまにしか見かけませんが)
価格は格安で、サービスは充実していて整備もキッチリしてくれるなんて整備工場は私の知る限りは、ありません。
格安であることには、必ずその理由があります。
格安車検のメリット
- 何と言っても価格が安い
- 短時間で作業が終る
1つ目のメリットは、文字通りですが、安くなれば格安車検の意味が無いということです。
特徴でも記述しましたが、格安車検は料金の安さをお客様に提供する価値としていますので、格安車検と謳っていて料金が高ければ、安さを求めて選んだお客様にしてみると詐欺にでもあった感じですよね。
特にチェーン店やユーザー代行などの車検の場合は、料金の安さを全面に出してPRしており、他店よりも安く出来ることをアピールするお店が多いです。
2つ目のメリットは、車検が短時間で終わるということです。
これは、お客様にとって待ち時間が短く済むという点ではメリットと言えます。
格安車検のメリットを挙げてみましたが、やはり料金の安さという点が一番大きなメリットであるとは思います。
しかし、それ以外にお客様にとってのメリットがあるかと言えば、私としてはあまりメリットは無いように思います。それはデメリットの方で詳しくご説明します。
格安車検のデメリット
- 料金が安い以外にお客様に提供できる価値が少ない
- 短時間作業のため、希望する整備が受けられない
- 料金の差以外の品質・技術などの差がわかりにくい
デメリットの1つ目として料金が安い以外に、お客様に提供できる価値が少ないということです。
格安車検は、基本的には料金を安く設定して他社との差別化を行っています。しかし、裏を返せば料金を安くすること以外でお客様にアピールするポイントが無いということでもあります。
全ての工場がというわけでは無いですが、料金以外で他社と競争できるポイントを持っている工場は、料金が安いことに特化してアピールする必要は無いのです。
料金を安くすることは、アピールする上ではもっともお客様にはわかりやすいことなのですが、大事なことを隠していることでもあるんです。それは以下でご説明します。
デメリットの2つ目として、短時間作業のため希望する整備が受けられないということです。
格安車検の場合料金を安く設定していますので、会社(整備工場)は収益を得るためにはかなりの台数の車検を毎日行わなければなりません。
つまりわかりやすく言うと、「お客様には料金の安さと短時間での車検をお客様に提供する。その代わり車検に合格するため以外の整備に関しては、後回しにさせて下さい。」ということとなります。
もちろん整備を必要とする場合は、格安車検ではない車検メニューに切り替えて対応されている工場もありますが、すぐに故障する可能性があるけれども、車検料金を抑えるためと短時間で終らせるために、車検の安全基準に合格さえしていれば整備をしない(提案もしない)という工場もあります。
デメリットの3つ目として、格安車検では、料金の差以外の品質・技術などの差がわかりにくいことです。
料金の差というのは最もお客様からみてわかりやすい差となります。しかし問題は、料金の違い以外で工場の違いがお客様がチラシやCM・ホームページで見ても判断が出来ないということです。
プロだと思って、故障の修理をお願いしても、技術が伴っておらず、修理に数ヶ月を要するところもあります。
確かになるべく料金を安く抑えたいというお客様のお気持は良くわかります。
工場によっては車検に合格させるだけが仕事と考えているところもあり、お客様の安心や安全のために点検や整備を行うという考えを持っていないところも実在します。
困ったことに、料金の違いだけではそのような工場かどうかは判断ができません。弊社ではよく社員に話す内容ですが、「車は便利なものであるけれども、一歩間違えば人を殺してしまう凶器にもなる」ということです。
全ての格安車検が悪いとは言いませんが、自分でどんな工場(会社)なのかを確認してから任せるということが重要だと思います。ダメだと思ったらやめる(断る)ということも選択肢です。
民間車検整備工場の車検の特徴
技術の高い整備工場の車検では、ディーラーよりも安く修理することができます。
ただし、大きな問題点としては、自動車整備工場は、第三者の評価がされているわけでも、その評価が公開されているわけでもありません。つまり、技術の高さを見分けることは不可能であり、完全に口コミを頼りにするしかありません。
民間車検整備工場での車検の最大の特徴は、メーカーを限定せずに車検ができます。
ディーラーは自社メーカーには強いですが、他社の車になると不得意です。ですが、民間車検整備工場となると、基本的には全てのメーカーの車に対応しています。中には輸入車はできないとか、トラックはできないなどがある場合もあります。多くのメーカーの車に対応するためには、幅広い知識や技術が必要になりますので工場によってはディーラーよりも技術力の高い工場があります。
また、ディーラーのような純正新品部品を中心とした部品交換ではありませんので、料金を抑えることが出来ます。
民間車検整備工場の車検のメリット
- 基本的にはどのメーカーの車でも作業が可能
- 料金がディーラーよりも安い
- 純正部品以外の部品でも対応してくれる
- 部品交換だけではなく、部品の修理にも対応してくれる
メリットの1つ目は、どのメーカーの車でも作業が可能という点です。
ディーラーとは異なりますので、特定のメーカーの車だけ主に整備しているということはありません。「特定のメーカーに強い」ということをアピールされている工場もありますが、基本的にはそのメーカーだけではなく作業が可能です。(輸入車・特殊車両などは工場によって扱いが異なります。)
メリットの2つ目として、料金がディーラーよりも安いという点です。
ディーラーはメーカーの求める整備品質や基準をお客様にサービスを提供しますので、どうしても作業工賃が高くなったり、純正新品部品を使用するため料金が高くなってしまします。
しかし、民間車検整備工場では特定のメーカーから支援や要求を受けている訳ではありませんので、お客様にとって最良の方法を選択できるわけです。ですから、ディーラーと比べると料金が安くなることが多いです。
メリットの3つ目として、純正部品以外でも対応してくれる点です。
ディーラーでは、純正の部品の販売を行う必要性もありますが、民間車検整備工場では特定のメーカーの部品を売る必要はないですから、お客様にとって良い部品であればメーカーを問わず使用することができます。
最後にメリットの4つ目ですが、修理可能な部品は修理で対応してくれるという点です。
ディーラー車検の場合は、マフラーの腐食で穴が開いて排気ガス漏れをしていたら、交換を提案されます。この場合は、部品代の約5万円がかかってしまうのですが、見て見ると、溶接でなんとかなるケースも多いです。この場合は、2万円以下で抑えることができます。
もちろん、全部を修理できるというわけではありません。その場合でも、中古部品やリビルト品などで対応する為、新品の部品交換に比べて安くすることが出来るのです。
民間車検整備工場の車検のデメリット
- 工場によって技術力に差がある
- 工場が持っている設備に差がある
- 若い整備士が少なく、新しい技術への対応が難しい
デメリットの1つ目は、工場によって技術力に差があるということです。
ディーラーのようにメーカーの技術的な支援があるわけではない民間車検整備工場では、自分達で技術力を向上しなければなりません。
しかし、その為の技術研修などはそれぞれの工場(会社)の考え方によって大きく変わってきます。
つまりお客様のために技術力を上げようと研修をする工場と、分らなければ全て他社に整備を任せてしまう工場もあります。
ただ、表立って「うちは技術力が低いです」なんて言う工場はありませんから、なかなか技術力の差を見極めることは難しいです。
デメリットの2つ目は、工場が持っている設備に差があるということです。
民間車検整備工場では、ディーラーのようにメーカーの支援があってメーカー指定の工具やコンピューター(外部診断機)を持っている訳ではありません。
必要な工具などの設備は、当然ですがそれぞれの工場が自分達で揃える必要が有ります。
これも工場(会社)ごとの考え方で大きく変わってきます。どんな工具・設備を揃えるのかは、どんな整備をするのか・どんな車に対応するのかで大きく変わってきます。
例えば、ハイブリットカーは走るコンピューターですので車にはたくさんのコンピューターやセンサーがあります。
車の調子が悪い・警告灯が点灯したという時に、車のどこが悪いのかを確認する作業や、ブレーキのオイルを交換するのにもコンピューターを接続しないと作業が出来ないという車も有ります。
この様に車の整備をするためには、一般的な工具だけではなく、コンピューター(外部診断機)や専用の工具が必要な場合もあるのですが、工場(会社)の考え方で、一般的なもの以外は持っていないという所もあります。持っていなければ、整備も出来ないわけで、やはり出来ないものは他社に任せるとなってしまいます。
これもお客様から見ると差が分り難いですよね。
デメリットの3つ目は、若い整備士が少なく、新しい技術への対応が難しいということです。
平成28年度のデータで見ると、ディーラー整備士の平均年齢は約34歳であるのに対して、民間車検整備工場の整備士の平均年齢は約48歳となっています。
今の車はコンピューターやセンサーが車のいたるところにあるため、不具合が発生した場合の点検・診断をする作業がコンピューターを使用して行わなければなりません。
しかし、ディーラーと比べると平均年齢で14歳も高齢となっている、民間車検整備工場では車の進化に対応できない整備士が多いことも事実です。(一番問題となるのが、コンピューターを使えないということです)
また、車に搭載されている機能自体を理解できず、機能が正常か異常かの判断が出来ない。といった事例も有ったようです。
車は、どんどん新しくなっていきますが、人口と同じように整備士も高齢化社会を迎えてきていますので、その対応が出来ない工場も増えてきています。
結局どこがいいの?
メリットとデメリットをまとめると次のようになります。
メリット | デメリット | |
ディーラー車検 | 自社メーカーの車両に関する知識・技術が高いという点。 他の整備工場と比べて点検・整備に関する安心感は高い。 メーカーが推奨する純正部品を使用する事で部品の信頼感がある。 フォローアップを特別価格で受けることができる可能性がある。 |
料金が高い 自社メーカー以外の車は不得意 新品部品以外での交換を進めてくれない 修理よりも交換を優先される |
格安車検 | 何と言っても価格が安い 短時間で作業が終る |
料金が安い以外にお客様に提供できる価値が少ない 短時間作業のため、希望する整備が受けられない 料金の差以外の品質・技術などの差がわかりにくい |
民間車検整備工場 | 基本的にはどのメーカーの車でも作業が可能 料金がディーラーよりも安い 純正部品以外の部品でも対応してくれる 部品交換だけではなく、部品の修理にも対応してくれる |
工場によって技術力に差がある 工場が持っている設備に差がある 若い整備士が少なく、新しい技術への対応が難しい |
選択をする際は、これらのメリットとデメリットを考えた上で、一番現状に折り合いがつく選択肢を選べば良いでしょう。
また、わからなければ、周囲を探せば、詳しい人が何人かいるはずですので、それらの人に口コミを聞いてみるのも良いでしょう。